仙石病院 大山 秀樹
(はじめに)
医療における画像の管理はきわめて重要です。IT以前はひたすら倉庫に蓄積し、人手を介して探すというきわめて
非効率的な運用をしていました。しかしIT以降これを利用すれば簡単に出来そうだと医療関係者は皆期待しましたが、
現実には不可能である事が認識されるようになり、最近では、このような期待を捨て、さらに過去のカルテや画像まで
も法定の保存期間を過ぎたものは処分しているのが実情であり、むしろ電子カルテへの期待が高まっています。
しかし私は未熟な電子カルテへの幻想こそ危険ではないかと考え、敢えてカルテおよび画像のデジタル化保存の開発に
取り組んできました。ここにほとんどコストをかけずに100万件を超えるデーターを蓄積する方法と検索する方法を
完成させることが出来ましたので、同じように悩んでいる医療関係者に少しでも役に立てればと思い公表することに
しました。
構想は12年前に次期OSとしてWindowsNTが発表された時に始まります。RAID1)2)やLANケーブル3)という用語すら
ほとんど未知の時にPentium80Mhzのサバーを自前で約200万円を投資して購入、仕様書と悪戦苦闘しながら自分で
ビルドし4)5)、その後LANの配線のみを業者に依頼し、Windows95の発表に合わせてクライアントマシンを数台購入
して少しずつLAN環境を整えてきました3)。
1) 必要な院内LAN環境(画像ファイルサーバーとデータベースサーバーの準備)
WEB検索システムを構築するうえで大事なことは、クライアントから画像ファイルサーバーにアクセスできるように
するために、WINSサーバーとDNSサーバーを導入し統合しておく必要があります。これによりクライアントでいちいち
ホストファイルを作成する必要がなくなります6)7)。
私は今後を含め開院から約20年の画像を蓄積可能なように、初めはハードデイスクとRAIDカードを単体で購入しファイル
サーバーと接続していましたが、昨年よりハードデイスクの低価格化に合わせて、1テラバイトのストレージを購入しま
した(パーツで購入し自分で組み立てることにより経費として節約できます)。これにより以前購入した500GBのスト
レージはカルテイメージの保存用に専有化することが出来ました。
画像ファイルサーバーとは別に高速なデータベースサバーを用意します。これも自分でビルドすれば20万円の経費内で
構築することが出来ます。画像ファイルサーバーとデータベースサーバーを分けることにより、システムの負荷を軽減し、
データーの損失の危険性を回避でき、バックアップの頻度も少なく出来ます。尚バックアップサーバーは同じLAN上の
別なサーバーを用意することにより、バックアップ中のトラブルを回避できます。
2) デジカメによる画像の取り込み
1991年11月の開院以来のすべての画像をデジタル化するのに考えた方法が320万画素のデジタルカメラの利用です。
単位時間あたりに膨大な数量を処理しなければ事業は完成しません。デジタルカメラを利用したことにより2000年5月
から作業をはじめ2004年3月末時点で約40万枚のフイルムのデジタル保存が完了し、現在は取り残しの確認作業中です。
なお法定の3年の保存期間を過ぎたフイルムは破棄しました。
さてクオリテイーですが、オリジナルに遜色なく復元するためには300dpiで取り込まなければなりません。半切のフイ
ルム(CTやMRIなど)では2000万画素相当となります。しかしCRTでの表示のみを考えれば72dpiでよく320万画素の
CCD集積度があれば充分と考えました。また256色グレイの諧調でよいことから、JPEG保存すればさらにファイルを圧縮
できます。運用画面に示すようにクオリテイーは満足できるものであり、時系列で比較することを考えれば充分だと思われ
ます。ところで撮影中に注意しなければならないことは、コントラストやフイルムの大きさの違いによりピントが合わない
ことがあります。これを修正するために私は病理臓器の撮影台を流用し透過光の強さを撮影時に変更して対処しました。
またフイルムの大きさに合わせたマスクをロスフイルムから作成しフイルム外からの光を遮蔽しました。
尚後で画像登録し易いようにフイルム袋の表書きを初めに撮影し、この表書きの順番にフイルムを撮影していくのがこつです。
3) 出来上がった運用画面
こちらを参照してください。(別窓で開きます)
4) MySQL, PHPのサーバーイントール
MySQLのデーターデイレクトリーは将来バックアップをとることを考え、デフォルトのCドライブではないドライブに30GB
以上の充分な領域を確保しインストールしておいたほうが良いでしょう。
5) MSAccessとMySQLによる画像登録アプリケーションの開発
Accessマクロを記載しておいたので参考にしてください8)9)。Accessの画面から画像を呼び出し、これに患者情報、画像
情報を属性として付加し画像ファイルの位置情報とともにデータベースに登録します。登録のためのPCはAccessをインストール
したもの1台を専用にします。
6) Apache, PHPとMySQLによるWEB検索システムの開発
データベースサーバー上にApache, PHP, MySQLをインストールします。HtmlファイルとPHPファイルを用意しましたので
参考にしてください10)11)12)13)14)。※別窓で開きます。
(最後に)
お金をかければもっとスマートなものが出来るかも知れません。しかし何かトラブルが発生した時には、すぐ対処できずセキュ
リテイーについても安心ではありません。ハードからソフトまで完全に理解したエンジニアが常時居れば解決できます。私の
専門は脳神経外科ですがコンピューターネットワークはきわめて脳神経の仕組みと類似しています。脳神経は中央集権型では
ありません。分散型システムで一箇所の病変で全体がダウンしないように作られており何重にも少しずつ異なったバックアップ
システムが用意されています。スプリットブレインDNSという言葉がありますが、このスプリットブレインとは分離脳の事で
脳外科ではきわめて面白い知見が蓄積されています。
プログラムは稚拙ですが、とにかく動きますのでトライしてみてください。またこうすればもっと良いなどのご意見もお聞かせ
ください。
私でも出来たことですので皆さんも頑張って構築してみて下さい。自分の組織に合ったオーダーエントリーシステムを構築する
のも意外と簡単かもしれません。また現在はほとんどの放射線領域の機器はDICOMになっていますので、古いPCをルーターに
して放射線科の診断機器と接続するのは容易です。こうすればクライアントのアクセス権料が発生しませんのでWEBアクセスの
PACSをコストをかけないで構築できます。またこの方法はネットワークを分離できるのでウイルスその他でネットワーク全体が
ダウンすることを防ぐことができます。同じようにして検査システムとも接続できます。仙石病院では1999年から放射線科の
LANと接続し、2003年からは検査課とも接続しています。病棟から検査結果も画像も照会できるようになっています。
マイクロソフトを擁護するわけではありませんが、WindowsシステムはUNIXなど他のシステムを理解する手助けになります。
プロトコールは同じですので、違いはプログラムが直接見れるかどうかです。MacからもLinuxからもアクセスできるように構成
出来ればWindowsプログラムの想像は可能ですので、UNIXプログラムからWindowsプログラムの弱点が想像でき、Windowsの
セキュリテイーをあげることも出来ます。
(文献)
1) 尾形 壮:システム管理のためのRAID製品ガイド. コンピューター&ネットワーク LAN 6:78-84、1995
2) 斎藤 勉:マルチメデイア時代に向けて飛躍するRAIDテクノロジ. コンピューター&ネットワーク LAN 6:85-90、1995
3) フランク.J.デラフレア、レス.フリード、鷲谷 好輝 訳:イラストで読むネットワーク入門. インプレス社、1994
3) 福永 勇二:WINDOWSネットワーク入門. アスキー社、1995
4)Mark Minasi, Christa Anderson, Elizabeth Creegan:Windows NT Server3.5パーフェクトガイド. 翔泳社、1995<
5)Karanjit S. Siyan:WindowNT Server4 ネットワークバイブル. アクロバイト監訳、インプレス社:1998
6)藤木 紅葉、多岐沢 悠、桂 ゆうり:WindowsNT4.0インターネットサーバー構築術.イージーラーダーズ編:オーム社、1997
7) 寺田 祐司、知北 直宏、中島 一慶:WindowsNT4.0インターネットサーバー構築ガイド. ソフトバンク社:1998
8)John L. Viescas, 小川 晃夫訳:Microsoft Access97オフィシャルマニュアル. アスキー社:1997
9)豊崎 直也:Access+MySQL実用データベースシステム構築. 秀和システム社:2003
10)大垣 靖男:PHPポケットリファレンス. 技術評論社:2004
11)志村 伸弘:MYSQL徹底攻略ガイド. 技術評論社:2003
12)豊崎 直也:一週間でマスターするSQL for Windows. 毎日コミュニケーションズ社:2003
13)田中 ナルミ、阿部 忠光:標準MySQL. ソフトバンクパブリッシング社:2003
14)星野 努:いますぐ導入PHP+MySQLで作る最速Webシステム. 技術評論社:2003